そのあたたかいぬくもりが、この腕の中に在るのなら




















「ルック」
俺の寝台の中で安らかな寝息を立てるルックの頬を、指で軽く叩く。
「ルーック、起きな」
「…―――ん…」
酷く眠たそうに薄らと瞼が開いた。まぁ、眠りに就いてまだそんなに時間は経っていないから、仕方の無い事だとは思うが。
「……あ、…さ…?」
ぼんやりと、まだ薄暗い室内に目を遣り、訝しげにルックが訊ねてくる。
「いや、まだ早ぇけどな。来い」
寝台の毛布で包み込んで、まだ鈍い動きのその体を抱き上げた。目を擦りながらも大人しく寄り掛かってくるルックをそのままに、余り音を立てない様に静かに窓辺に歩み寄る。
窓のすぐ傍に立つと、ちらりと視線を向けたルックが、ぽつりと小さく呟いた。
「……ゆき……」
「あぁ、お前が寝てる間にな」
トランは暖かめの気候だから、そんなに積もってはいないけれど。もしかしたら今なら足跡位なら付けられるだろうか。
「まぁ……もう解けるだろうけどな」
「………?」
ルックが不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。
と、その時。
「…――――あ」
サァッ…と窓から差し込んだ光に、ルックがぱっと窓の方に顔を向けた。
眩しい、鮮烈な光。
その光を雪が乱反射して、更に眩しさを溢れさせている。
目を細める程の、陽の光。
「………初日…」
「な? 今日は天気も良さそうだし、すぐ解けちまうさ」
「…うん、―――でも」
窓に目を向けたまま、ルックがこつんと俺の肩に頭を落とした。目を細めて微かに微笑む。
「……綺麗だね」
「…そうだな」
ほんの一時の光景だからこそ、尚更そう思える。
この光景を作り出したというのなら、それは神とやらを称賛してやっても良いかもしれない。
「ルック」
呼んで、促す様に頬に指を滑らせた。俺の肩から顔を上げて見つめてくるルックに、そっと掠める様に口付けて。
「今年も宜しく」
微笑う様にそう囁けば、キスで微かに頬を染めていたルックが、少し照れ臭そうに柔らかく微笑った。
「…うん…」
年を重ねる。
時の止まってしまった俺達にはどうでも良い事だけれど。
動かない時を数えるなんて、馬鹿らしい―――なんて事を考えなくもないけれど。
それでも。
動いていない『時』は俺達の外見だけだと思いたいから。
心の『時』は動いていると、せめて信じていたいから。
この存在が腕の中に在るのなら、時を数えていくのも悪くない。
「…宜しく、ね」


共に、数えていけるのならば。










―――――さぁ、今年も一緒に居ようか



















03年のお正月に、希望者の方のみにメールで配信したブツでございます。

Daybreakとは『夜明け』という意味だったと思います。確か(確か?)
それにしても何で新年早々こんなにいちゃらぶなんでしょうか、こいつらは。



20030101初出/20031201up


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