『冬』





――――それは触れ合う為の、理由




















澄み渡る星空。遠く、遠くまで透明になって。
星は眩しく光り、瞳に煌めく。
「………きれい」
白い息と共に、自然そう呟いた。
この時期の星空は、酷く鑑賞に値すると―――そう、思う。
肌を刺す冷たさも気にならない程に。
指先が凍える事も、どうでも良いと思える程に。
そんな風に思う感情も、彼と出逢えてなければ知り得る事すら無かったのだけれど。
「……―――発見」
と。
ほぅ、とまた白い息を吐くが早いか、耳に届いた僅かな声。
顔ごと向けていた視線を落とせば、予想通り、其処には呆れ顔のカインが居て。
「何やってんだ? そんなとこで」
「…星空鑑賞」
素直に答えてみる。
と、肩を竦めて再度問われた。
「……真冬の、冷える屋上で?」
「一番、空に近いから」
そんなに冷えてないよ、と続けると、カインはわざとらしく重い溜息を零す。
つかつかと歩み寄ってきて。手摺りに座っている所為で今は頭一つ分高い僕をじいっと見上げてきたかと思うと、ぺとっと両手で頬を包み込んできた。
「説得力無ぇよ。こんな真っ赤にしといて」
くん、と引き寄せられて。こつりと合わされる額。
……じわり、と。
染みる様に―――沁みる様に、触れた所から熱が伝わって。
ああ、冷えていたのか、と。ゆうるりと曖昧に自覚する。
「……あったかい」
「お前が冷え過ぎなんだよ。…ったく、部屋に居ねぇと思ったら」
咎める様な口振りで、けれどもその声色は何処か温かかった。顔にも淡く微笑が浮かんでいるし、本当に怒っている訳ではないんだろう。
頬や耳を温める手に、すり、と無意識に擦り寄って。
と、ふとカインの腕に絡んでいる、白い何かに気が付いた。
「…マフラー?」
ぽつりと零すと、カインは思い出した様に視線を移す。
「あぁ、先刻グレミオにな」
外出るなら持ってけって、と続けつつしゅる、と腕に絡むマフラーを解いた。
ひょいと僕の首に回し、器用に手早く巻いていく。
「いいよ…」
「問答無用」
言葉を遮られて。困った様に閉口すれば、カインはくくっと喉で小さく笑った。やがて首元に蝶々結びが出来上がったかと思うと、満足そうに笑みを浮かべる。
「ん、可愛い」
その言葉にちょっとだけむっとしたけれど。敢えて気にしない事にした。
手を伸ばし、そっとカインの肩に触れて。
「ルック?」
「…カインは?」
「あ?」
「だって―――」
だって僕より。
……僕より、寒さに弱かった筈でしょ――――?
「…………」
言葉が続かず、只じっと見つめ続ける。
と、不意にカインが、ふっと柔らかく微笑んで。
直後、ぽすりと膝に落ちた心地好い、…重さ。
「カイ…」
「俺は、こっちな」
腰を抱き込まれ、腹部に顔を埋められて。
そんな状態が、全く恥ずかしくなかった訳じゃ無いけれど。それでも伝わってくる温かさが、―――勝った。
腕を回して肩を抱き、頭に頬を置く。
…ああ、ほら。
(……あったかい……)
星空の下。
ゆうるりと、静かな沈黙か続く。
不思議と、部屋に戻ろう、とはどちらの口からも出なかった。
戻った方が、確実に暖かい筈なのに。
二人共、それはちゃんと判っている筈なのに。


(…うん、判ってるから―――)





「もう少し、このまま…」










……その呟きは、一体どちらのものだったんだろう――――…?



















67890hit京様リクで、『カインルクでマフラーネタ』でした。

………ま、マフラー目立ってねぇー!!(汗)
京様、苦情及び書き直し請求等、お待ちしております…。



カイン様は暑さに強く、寒さに弱い。ルックはその逆。お約束ですかね。



20040111up


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