四度目に、体を重ねた夜の事だった。 「ッ、ぅくン、っ、あ、あ、ッア、…―――ッッ…!!」 甲高い嬌声が室内に響く。 女のものより幾分低い、耳に心地好いそれを聞きながら、神田はきつく締め付けてくるアレンの内へと堪えていた熱を吐き出した。 「…ッ、ふ」 「う、―――ん、ン、ぁ、っ…!」 最奥に埋め込んだまま、最後の一滴まで吐き出そうとするかの様に神田はアレンの体を幾度か突き上げる。終わりまで容赦の無い神田の動きに、アレンの白い右手が弱々しくシーツを手繰り寄せた。 やがて深く息を吐くと、神田は解けて乱れた己の髪を雑に掻き上げる。 最初は結っていた筈の髪が解けた瞬間を覚えていない事に、神田は髪が指を滑る感触でふと気付いた。 「ん……ッ…」 神田が埋め込んでいた自身をずるりと引き抜けば、ひくりと小さく震える白い背中。その肌には幾つかの朱が散っている。 俯せに寝転んだままの少年の肩を掴んで仰向けに転がし、ふと目に入ったものに神田は眉を顰めた。 「……んだよ。また達ってねェのか」 其処にあるのは、今だ力を失っていないアレンのそれ。 ち、と小さく鳴る舌打ちに、アレンは熱に浮かされた様な息を繰り返しながら口を開く。 「無茶、言わない、で、下さい、よ」 女でさえ、律動だけで達するには多少の慣れが必要だと聞くのに。 受け入れるのすらまだたった四度目の、しかも男である自分が、そう簡単に後ろだけで達ける様になる訳がない。 ぼんやりとそう思考し、アレンは熱っぽい吐息を一つ吐き出した。逃げ場所の無い欲望が、体の中でぐちゃぐちゃに渦巻いている。 ああ―――達きたい、達きたい、達きたい。 「別に、神田が下手とか、そういうんじゃないです、から」 「当たり前だろうが」 「…何処から来るんです、その、自信」 ふ、と微かに喉を震わせて微笑うアレンに手を伸ばし、神田は額に張り付いた白髪をそっと掻き上げた。そのままゆっくりと肌を辿って頬を撫ぜれば、アレンはひくんと唇を震わせたものの、心地好さげにその掌に擦り寄る。 「かんだ」 そうして空気に溶けるのは、場違いな程に酷く幼い声色。 「いきたい」 じっと見上げてくる銀灰色の双眸は、狂おしい程の情欲に塗れて潤んでいた。 一瞬焦らしてやろうか、と意地の悪い考えが頭に浮かぶも、見つめてくる瞳にその気が失せて神田は腰を上げる。 今までも言った事は無いし、これからも言うつもりは勿論欠片も無いが。この妙に世慣れした目の前の白い子供を甘やかす行為を、神田は存外に気に入っていた。 甘えたくて、けれど素直に甘える事が出来ない酷く不器用な子供。半端に手を伸ばしたまま躊躇しているその子供を、伸ばされた手ごと抱き竦めて優しく甘やかしてやった時のあの堪らない甘美さ―――あれはきっと、味わった者にしか判らないだろう。 「足、開け」 端的に命令し、アレンが動こうとする前に神田はその足を押し開く。 相手に全てを曝け出す自分の体勢に、染まっていたアレンの白い頬が僅かに赤みを増した。 「か、ん」 いつか。 楽しげに口の端を上げながら、神田は思う。 いつか、遠くない未来、自分達がお互い生き残っていて、そしてこの子供が自分に染まりきったなら。 身も心も、一番大切なもの以外全て、自分だけに染め尽くすことが出来たなら。 その時は―――この子供が一番欲しがっている言葉をくれてやろう、と。 「ッ」 く、とアレンの瞳が見開かれた。 躊躇無く自身を包み込んだ咥内の感触に、少年の成長途中の華奢な体がびくりと大きく跳ねる。 「あ」 甘い嬌声が、闇夜に溶けた。 終 くっつく前の二人でした。くっつく前というか、告白前というか。 神田さんは自覚してるけど、アレン様はしてない感じですね。 因みにタイトルの「闇夜」は神田さん、「子守歌」は性行為自体を示しております。うふふー(オオイ!) 実際のところ、男性同士で性交渉を持つ場合、慣れるには本当にかなりの年月が必要になるそうです。 BLの世界って有り得ないよねー。でもだから良いんだよねー(笑) 20090203up ×Close |