「十分でメシ食って司令室に来てくれ。任務だ」
リーバーのその一言で、神田とアレンの睨み合いはひとまず中断する事となった。
先に司令室へと向かったリーバーとリナリーを見届け、神田はアレンからふいっと視線を外す。いつもより更に苛立っている己を自覚しつつ、自分が座っていた席へと戻った。
リーバーには十分と言われたが、神田は既にもう食べ終わっている。未だ此処に居るのは、うじうじした探索部隊に引き止められていた所為だ。
神田は蕎麦のトレイを手にすると、くるりと踵を返して返却口へと向かう。こんな、不愉快な人間ばかりが居る場所とはさっさとおさらばしてしまいたかった。
しかしそんな思いとは裏腹に、ふと視界に入ったものにぎょっとして神田は思わず足を止めてしまう。
其処には、料理の山。
軽く十皿以上―――しかも全て大盛り―――はあるだろうか。様々な国の料理が所狭しと並ぶ中、先程見たばかりの白い頭を見つけて神田は眉を顰めた。どんだけ食う気だ、と半ば呆れつつ、どんどんと皿を平らげていく少年を何とはなしに一瞥し―――神田は更にぎょっと目を見開く。
「どっ……」
そして、叫んだ。
「どういう食い方してんだテメェっ!!」
「ふぐっ!?」
いきなり叫ばれたアレンは思わずスプーンを銜えたままびくりと肩を揺らす。
そんなアレンの様子にも目を吊り上げると、神田はつかつかと白い少年に歩み寄り銜えたままのスプーンを取り上げた。いきなりの暴挙にアレンが声を上げようとするが早いか、トレイを置いてその白い頭をぐわしと掴み、何処からか取り出した布でアレンの汚れた口許をごしごしと拭う。
「んん!? カ…うむぅっ」
「スプーンを銜えたまんまにすんじゃねェ! こんなに食べカスくっつけて、テメェは幼児か!?」
「ちょ―――ン、ッ」
「それから音立てて食べんな! 零すな! 飯を両手に持つのも止めろ!」
アレンの口許を綺麗に拭い取ると、神田は漸く白い頭を手放した。ぷはっと息を吐くアレンにそのままで待ってろ、と言い捨て、再びトレイを手にしてカウンターへと向かう。アレンが唖然とその姿を見守っていると、程無くして戻ってきた神田はその両手にナプキンとタオルを携えていた。
「あ…あの、神田…」
「どうしても上手く食えねェってんならナプキン位付けろ。シャツが汚れるだろうが」
「は、はぁ、えっと…」
「食い終わったらちゃんとこれで口拭け。使い終わったらジェリーに返しとけよ」
有無を言わさずアレンの首元にナプキンを付け、タオルをテーブルに置いた神田は言うだけ言うと踵を返してさっさと食堂を後にする。
その背中を呆然と見送った後、アレンはちらりとテーブルに置かれたタオルに視線を向けた。
触れてみれば、タオルは濡れている。恐らく拭きやすい様に、という配慮からだろう。
もう一度食堂の出入り口に目を向け、アレンはぽり、と頬を掻く。
「……根は良い人、なのかな……?」
ぽつりと零れた声は、何処か擽ったい響きを含んでいた。



















先日、私は仕事中にこんなことを考えておりました(仕事しろ)

(何か最近、脳内の神田さんの母親化が凄い事になってるなぁ)
(カイン様でも此処まで酷くなかったぞ、どうしよう)
(ネタは出てきそうな感じなんだよなぁ。でもお母さんな神田さんなんて需要あるかなぁ)
(それでなくともうちの神田さんってば姫なのに…)
(ん? お母さんな神田さん…?)
(お母さんな神田さん……お母さんな神田さん…)
(オカンな神田さん…)
(おか……)

(オカンダさん!!)


この単語が出てきた瞬間もう駄目でした…(爆)


そんな訳で、アレン様はこのまま神田さんに懐いちゃうと良いよ!(笑)



20090330up


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