昼頃には激しい雷雨が来る、との地図職人と風使いの声を揃えた信用出来る予報で、その日の解放軍はそれの対策に朝から俄かに活気付いていた。
「シーナ」
自分を呼び止める声にシーナが補強の為の板を抱え直しながら振り向く。と、其処には予想通り、執務室で指示を出している筈の軍主であるカインが。
「お前、こんなトコで何やってんだよ」
おシゴト良い訳? と問うシーナにカインが肩を竦めた。
「此処はもう良いからこんな時位休め、ってマッシュに追い出された。所でルック知らねぇか?」
「ルック? 見てねーけど…、何? 居ねーの?」
会話の間も周囲に視線を遣りながら、カインは問い返す声に頷く。
「魔法兵団の指示を副官に任せて行方不明。副官は俺んとこに行くもんだと思ってたらしい」
「……マジ?」
「城の何処かに居る感じはするんだけどな。これだけ賑やかだと気配掴むのも結構骨が折れるし」
ふぅ、と嘆息し、長い指が漆黒の前髪を掻き上げた。一瞬の思考の後、カインがくるりと踵を返す。
「ま、知らねぇんならいい。じゃあな」
「探すの手伝うか?」
善意で投げ掛けたシーナの言葉に、カインは顔だけを彼に向けて。
「遠慮しとく」
その顔の浮かぶのは、苦笑。
「あんな顔他の男に見せてやれる程、心広く無ぇからな」






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