【命】





それは、期末試験前のぴりぴりした空気の中での事だった。
「何処か、美味しいお菓子が売っている場所を知らないだろうか」
そんな空気とは無縁な問い掛けに、シィンとルゥの二人はマフィンを頬張る動きを止めてぱちくりと瞬く。
「菓子?」
「そう」
「何で僕達に訊く訳?」
「……中等部一の甘党と称される己を自覚しているのかな、君達は」
カフェルナーシェが呆れた風に肩を竦めて二人を見下ろした。
その視線に顔を見合わせたシィンとルゥは、やがて再びどちらからともなくマフィンに手を伸ばし始める。チョコレートマフィンを頬張りながら、シィンがちらりと視線を上げた。
「まぁ、知らなくもないけれど。それは、もしかしてあれ? 妹の為?」
「勿論」
こっくりと大きく頷くカフェルナーシェに、ルゥが呆れ顔で視線を投げる。
「相変わらずそのシスコンっぷりには脱帽するね…」
「何とでも」
「少しは否定しなよ」
オレンジマフィンを頬張りながら突っ込むルゥに、カフェルナーシェは心底判らないといった様子で首を傾げて。
「何故? 私は誰が何と言おうとリム命だよ?」
「…………」
「…………」
「それで、教えてくれるの? くれないの?」
そんなこんなで、試験後の予定は決定した。





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坊四兄弟10年後。シィン&ルゥ中3。同級生はシスコン王子です。
10年後ですから双子は27、そのお相手ズは26、女王様は29、下僕その他(酷)は30ですね(て事は全員四捨五入で三十路…!!)


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