「な、何だ?」
「いや、何だって……どうしたの?」
「別に何も」
さらりと返される答えは挙動不審さを更に増長させた。
怪しい。
何か怪しい。
これは問い詰めてしまわねばとルーが体を起こし掛けて。
しかしその時。
「「……ルゥ?」」
突然ノックも無しに開いたドアに、カインとルーはぱちぱちと瞬いて声を重ねる。
その呼び掛けに尖らせていた唇を更に尖らせたルゥは、ぱたぱたと駆け寄ってよじよじとベッドによじ登り、ぽすんとカインの腹に体当たりする。その不機嫌な様子に小首を傾げ、カインは小さな体を抱き上げた。
「ルゥ、どうした?」
「…………」
「シィンかフィー兄は?」
問い掛けてもいやいやと首を振って顔を胸に押し付けてくる幼子に、カインは一つ息を吐いてぽんぽんと宥める様に背中を叩く。
「眠たいのに寝れないのかな?」
「そんな感じだな」
感情が高ぶったままな故に、眠りたいのに眠れない、というのは子供には時折ある事だ。特にルゥは精神的に過敏な部分があり―――けれども表面的には変わらないので、それがまた厄介なのだが―――そういった夜が特に多い。
「にいさまぁ」
と、そのままルゥを宥め続けていると、開いたままのドアの向こうからシィンがひょっこりと顔を出した。
両手に持った二つの枕をずるずると引きずりながら歩み寄ってきたもう一人の幼子の体を、ルーがよいしょと抱き上げる。
「あのね、あのね、ルゥがおねむなのにねれなくてやだーって」
「みたいだな。フィー兄は?」
「はちみつミルク作ってあげるってキッチンにいっちゃった。でもまってるあいだにルゥがいっちゃったから、おいかけてきたの」
「…枕付きでか」
うん! と元気良く頷く弟にやれやれと肩を竦め、しかしカインの内心は神様有難う!! と万歳三唱状態だった。
ちらりとルーを見れば、彼女は既に子供達に意識が向いている様で。後でうっかりサイドボードの引き出しに突っ込んだままだった例の物を早急に処分してしまわねば、とルゥの背中を撫ぜながらカインは算段を立てる。
「…あ、こっちに居たんだね、二人共。御免ね、カイン」
「いや。…ルゥ、フィー兄来たぞ。蜂蜜ミルク飲むか?」
「…………」
「そんな事言わずに、ちょっとだけで良いから飲め。な? 折角作って貰ったんだから」
「フィーにいさま、ぼくもー」
「はい」
「わぁい! ありがとー」
「シィン、飲みすぎちゃ駄目だよ。夜中にトイレに行きたくなっちゃうから」
「はぁい」
…………使える訳が無かった。はっきり言って。
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ゴムネタ続きでした。
リオレノがギャグ→シリアスだったので、カインルーはシリアス→ギャグで行ってみました。ご期待に添えれなかった様な気がひしひしと致します。
あと1回続きます(笑)
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