「星辰剣を貸せ」
「……へ? ま、待てオイ、じゃあ俺はどうやってゾンビ共と戦うんだよ」
「その必要は無ぇよ」
躊躇するビクトールから星辰剣を奪い取りながら、カインはいいか、と強い瞳で彼を見上げた。
「今から俺が、ゾンビ共を全部何とかする。だからお前は、俺があいつ等を抑えてる間に生きてる奴を全員逃がせ。着の身着のままで良いから、とにかくティントの外に追い出すんだ」
「外にって…」
「ネクロードはティントを攻略すると公言した。って事は、あの妙にプライドの高い変態は、とにかく確実にそれだけは絶対にやる。逆を言えば、ティントの外に出ちまえば、取り敢えずはゾンビの脅威からは逃れられるって事だ」
阿吽叫喚の様相を見せる外に一度視線を向け、カインは再びビクトールを見据える。
「それに、ゾンビになっちまえば兵も市民も関係無い。……判るな?」
これ以上ネクロードの『兵士』を増やすと厄介だ。
暗にそう告げる紅い瞳にビクトールは頷いた。
「判った。…大丈夫なんだな?」
「誰に向かって言ってんだよ」
くすりと微笑って肩を竦めたカインは、ビクトールと軽く手を打ち鳴らした後、星辰剣を伴って建物から飛び出す。
鈍い動きのゾンビ達の間を擦り抜け、開けた場所に辿り着くと、じわじわと迫り来る亡者達を見回し一つ息を吐いた。手の中の星辰剣を鞘から抜き、逆手に持ち直してその柄をぽんと軽く叩く。
「悪ぃが、頼むぜ。俺一人じゃ流石に無理がある」
『仕方あるまい。だが、恐らく長くは保たんぞ』
「判ってる」
すぅ、と息を吸い、カインは星辰剣を持ち上げた。ゆっくりと歩み寄ってくる目の前の亡者を見据え、く、と口の端を上げる。
「お前等、――――誰に許しを得て今此処に居る?」
カインが勢い良く振り下ろした星辰剣の刃が、かっ、と地面に突き刺さった。
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そんな訳で力尽きたので此処で終了です。
この後へれへれになってゾンビに襲われそうになったカイン様をルックが助けに来ます。つまり一番格好良いのはルックという事で。
え、何処が熊坊かって?ちゃんと膝枕してるじゃないですか!(笑)
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