【褒め言葉】





きし、と寝台が音を鳴らす。
鼻腔を擽るのは独特の匂い。そして汗を含んだ馴染んだ香り。
ひくんと息を詰めた相手の反応に小さく微笑うと、カインは舌先で白い顎に伝わる雫をぺろりと舐め取った。
「ん、……ッ…」
そんな些細な刺激にも震え、小さく吐息を漏らしたルックがカインの首にしがみ付く。
寝台に座ったカインに向かい合う様にしてルックがその膝に腰を下ろしている態勢故に、しがみ付かれれば胸が密着し、殊更鼓動が伝わるもので。カインは片手でルックの背を支えながら、響いてくる早い鼓動にふ、と軽く微笑んだ。
「……な、に…?」
微笑う気配を察したのか、ルックがしがみ付いたまま掠れた声で問い掛ける。その声にん? と小さく応えると、カインは空いた方の手で傍にある薄茶の髪を掬い上げ、それにちゅ、と口付けた。
「いや、可愛いなぁと」
「……っ」
途端、ルックの最奥に収めた自身をきゅうっと締め付けられ、カインの双眸がく、と細められる。
急激に押し寄せた快感を何とかやり過ごしてふぅと溜息を漏らすと、カインは呆れた風に己にしがみ付くルックに視線を向けた。
「……お前な、可愛いって言われた位で」
「…る、さいっ…!」
うー…と耳の傍で発せられる小さな唸り声にカインは密かに一つ息を吐く。先程ルックの髪に触れた手をゆっくりと下ろし、細い腰にそろりと添えて。そのままルックが気付く前に幾度か緩く突き上げた。
「あ、…ッ」
びくりと震えたルックの爪が、思わずといった様子でカインの肩に食い込む。
「あ、…あっ、あ、や……ぁ、っ」
「可愛いって、褒めてんのに」
「そんっ…、―――ッあ!」
最後に一際強く突き上げ、その勢いのままにカインはルックをどさりとシーツの上に押し倒した。快感に仰け反るルックの足を大きく広げ、目の前の淫靡な光景にぺろりと己の唇を舐める。
そろりと手を伸ばしてとろとろと雫を零すルック自身を掌に包み込むと、面白い位にルックの腰が跳ねた。
「カ、イ…っ!」
「他の奴ならともかく、俺が言う時位は褒め言葉と受け取れよ」
「ひぁ、っ…あッ、あ」
水音を響かせながら自身を擦り上げる手に、ルックが堪らないとばかりに首を振る。
紅潮した頬と切なげに寄せられた眉。そして潤んだ翠蒼の双眸に見つめられ、カインは淡く微笑みながらルックに圧し掛かった。唇を奪って口内を貪り、遠慮無しに深く口付ける。
「んン……っ、ふ…ぁ―――」
熱い口内を探るのに満足し、最後にちゅ、と啄みほんの少し顔を離せば、其処には快楽に蕩け溺れ切った表情があった。己しか見た事の無いその表情にカインの頬が自然緩む。
――――あぁ、もう。
「…っとに、可愛いな」
「あっ…!」
「可愛い」
シーツを掴む白い手を解いてそれに己の手を絡め、カインは律動を再開した。巧みな動きでルックを翻弄しつつ、可愛い、を何度も繰り返す。
本心からのその言葉に対し、枕攻撃という報復が返ってくるのはもう暫く後の事。





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久し振りに書いたらカイン様が何だか攻臭くなった…(←や、攻なんじゃ…)


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