【情欲の火、灯すもの】





「……………あつい」
「クーラー掛けてるってば」
頬杖を突き、苦笑気味に微笑う隣の男をぎろりと睨み上げ、美鶴はころんとシーツを転がった。
ころころとベッドから転げ落ちんばかりに男から離れていけば、冷房によって冷えたシーツの感触。肌に触れるそれにほっと息を吐き、しかしすぐに己の体温が伝わりきってしまった事に、美鶴は不快も露に顔を顰める。
「何でこんなに暑いんだ」
「僕が冷房を入れようとする寸前に美鶴が僕を襲ったからだね」
にーっこり。
夕食の準備と明日の弁当の下準備を始める前に押し倒されてしまった三谷・芦川家主夫、三谷亘は、にこやかに微笑っている様に見えて実はさり気無く怒っているらしい。長年の付き合いからそれを瞬時に悟り、美鶴は手近な枕を抱えて肩を竦めた。
「…別に、しんどかったらもう夕食は出前でも良いし」
明日の昼も学食で良いし。そうぽつぽつと呟く美鶴に向けて、亘はばっさりと駄目、と切り捨てる。
「美鶴、学食だと極端に偏食になるんだもん。ちゃんと人参とインゲンも食べるって言うなら考えても良いけど?」
「…………」
途端に沈黙してしまった美鶴にくすくすと微笑い、亘はよいしょとベッドから起き上がった。
「まぁ、今日の晩御飯は簡単なので勘弁してね。出来るまで寝ててよ。腰辛いでしょ」
「誰の所為だ」
「僕の所為かなぁ」
だって乗っかかってくる美鶴が凄く色っぽかったんだもん。
シーツに頬杖を突いて照れ臭そうに覗き込んでくる亘にちらりと視線を向け、美鶴は白い腕を伸ばす。
きょとんとする亘の首にそれを回し、引き寄せ唇を合わせて。
「仕方無いだろ」
お前の汗の浮かんだ項が、堪らなかったんだ。
そう悪びれた様子も無く言い放つ美鶴に、亘は堪らず頬を染めて明け透けだなぁ、と笑った。





========

ミツワタミツ高校生時代って事で。
最初はワタミツを書くつもりでした。しかし書いてる内に自分がどちらを書いてるか本気でさっぱり判らなくなりました(滝汗)どっちも攻で受に見えるよもう!
尚、上記の高校生設定は、

・中学生時代にカップル成立。基本リバ。
・中二の時に亘母に恋人発覚。
・亘が頑張って同じ高校に進学。
・二人共寮に入るつもりが、亘母・美鶴叔母・アヤの画策により三谷家マンションに同居決定。
・亘母は高校進学と同時に再婚、再婚相手の持つ隣町の一軒家へ。
・なし崩し的に同棲生活へ。

というお約束的な設定でございます。


△Index