さて、一番はどちら? 人も疎らになった深夜。 毎晩底無しかと思う程の呑みっぷりを見せる相棒から解放され、漸く酒場を後にする。そのままつい其処を覗いてしまうのは、最早習慣とも言えるのかもしれない。 「ルック」 呼んでみれば、ルックはちらりと俺に視線を向けるや否や、軽く眉を顰めた。 いつもながらの態度にこちらも思わず溜息を吐く。 「まだ起きてたのか?」 「もう寝ようと思ってた所だよ。…あんたこそ、また熊に付き合ってた訳?」 程々にしときなよね、と続けるルックに、珍しい事もあるものだとからかう様に笑みを向けた。 「心配してくれるのか?」 途端、ルックの表情がむっと顰められる。 「…一緒の寝台で寝る羽目になる方の事も考えろ、って言ってるんだよ」 と、ぐいっと胸元の服を引っ張られて。 「え」 それに促される様に前屈みになれば、不意に甘い匂いが鼻を掠めた。見るとルックは少し背伸びをし、俺の首元に顔を埋めている。 首に掛かる微かな吐息が、肌が触れるか触れないかの距離を感じさせて――――。 「……相当飲んだみたいだね。布団の中で吐かないでよね?」 離れ様ぽつりと零された言葉に目を丸くした。胸元から手を離すルックを見遣ると、くすりと意味深な笑みを向けられて。 直感的に悟った。 …――――わざとだ。 「っわ、ッ…!?」 ひょいっと並の女より軽いその体を持ち上げ抱き上げる。ルックが状況を掴めていない内に、俺は階段へと踵を返し歩き始めた。 「ち、ちょっ…?」 「五月蝿い。煽ったからには責任取れ」 歩を進めながらぶっきらぼうにそう告げると、ルックはきょとんと幾度も目を瞬かせる。そんな姿が何だか酷く子供っぽくて、少し可笑しい。 と、ぷっと小さく吹き出す声が聞こえて。 「子供に煽られるなんて、情けないね」 「悪かったな」 「誰が悪いだなんて言ったのさ」 直後、また甘い匂いが鼻を擽る。俺の中の欲を何よりも煽る、甘い、甘い―――ルックの香り。 「…―――お、い…」 不意に、耳朶に唇の感触が触れた。 堪らず足を止めて。けれどルックはそんな俺には構わず、唇と舌でやんわりとそれを甘噛む。 …何処でこんなの覚えて来たんだ…。 ……って俺だ。 「……ルック?」 ゆるりとルックが顔を上げた。 見れば、まるで見せ付ける様にふ、と微笑を浮かべて。 「……仕方無いから、責任取って上げるよ」 その笑みがまた酷く妖艶で、煽情的で。 ………本当に、質が悪い。 終 という訳で初フリルクでございました。……多分もう二度と書かねぇ(早ッ) 時間軸は1でも2でもいけると思うんですが、1だとやはり青雷さんは犯罪者でしょうか(爆) 20030512up ×Close |