026:死神
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くら、り。 不意に目が回り、咄嗟に足を止めた。 やり過ごそうとしたそれは、しかし一過性のものではなかったらしく、カインは諦めた様に壁に手を突きずるずるとその場にしゃがみ込む。 浅く呼吸を繰り返しながら、ち、と小さく舌を打った。 (……気持ち悪ぃ) 父を―――テオ将軍を討った頃を前後して、カインは時折こういう症状に悩まされる様になった。 身体的な疲労や過労ではない。精神的なものでもない。ルックの言葉をそのまま借りるなら、これはカインの魔力が本来の許容量を超え始めた影響であり、増大し続けている魔力に魂と肉体が対応しきれていないが故の不調なのだそうだ。 右手に宿るそれは、大切なものの魂を喰らって、それ以外の魂も沢山喰らって、その代わりと言わんばかりにカインに魔力を与えていく。 ―――そんなものを望んだ覚えはこれっぽっちもないというのに。 「カイン様」 ふと聞き覚えのある声が背後から耳に届き、カインはゆるりと閉じていた目を開いた。 どうやら頭と体を襲う感覚をやり過ごすのに精一杯で、接近する気配に気付けなかったらしい。 「……フウマ、か」 「はい」 「…悪ぃけど、ルック呼んできてくれるか」 「御意」 ふっと背後の気配が消える。 もう少しの辛抱だと細く息を吐き出し、カインは再びそっと目を伏せた。 (―――お前は、何がしたい?) 思わず胸の内で呟くも、返ってくる答えは当然ながら―――ない。 不毛だ、と肩を落としながら、気を紛らわせる様に膝に額を擦り付ける。 愛しい風の子供がやって来るまで、あと少し。 - End - |
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久し振りに幻水を書きましたよ?(あわわわわわ) (2010-05-24初出) |