【アイのコトノハ】





眉を寄せ、唇を尖らせ、頬を膨らませて。
究極に不機嫌な様子にも拘らず、これまたそんな様子も可愛いと思ってしまう辺り、やはりこれも惚れた欲目という奴だろうか。そんな風にカインは考える。
「……だから、あれ言ったのは俺じゃねぇってのに」
「…判ってるよ」
「明らかに態度が判ってねぇよ」
「判ってるって、ば…!?」
ばっ、と勢い良く振り向くが早いか腕を取られ、ルックは驚いた様に瞠目した。驚きの余り隙だらけなルックの腕を引き寄せながら、カインは苦笑しつつその華奢な体を腕の中に収める。
「いい加減機嫌直せよ」
「べ、別に元々機嫌悪くなんてっ…」
「嘘付け」
「……っ…!」
ちゅ、と額に落ちたキスに、ルックは反射的に眼を伏せた。
その反応にくすりと微笑い、カインは次いで眦に唇を落とす。その後もこめかみ、鼻、頬、と順繰りに口付けていって。最後に触れた唇をゆっくりと啄んだ後、そっと離れながらぽつりと呟いた。
「……すっげぇ好き。愛してる」
ぴくり、とルックの肩が揺れる。
カインが覗き込む様にしてその顔を見れば、ルックの頬は鮮やかに朱に染まっていた。翠蒼の双眸が、悔しげにカインを睨み上げる。
「………それ、ずるい…」
「そうか?」
くすり、と笑んで、カインは再びルックの額へ口付けた。するりと頬を撫で、愛撫するかの様な仕草で薄茶の髪を掻き上げる。
「……愛してる」
そっと呟かれるは、最上の愛の言の葉。
「愛してる、ルック。お前だけで良い、――――お前以外、要らない」
愛してる。
愛してる愛してる愛してる。
何度も囁かれながら再度唇を塞がれ、ルックは自然ゆるりと目を伏せた。口内に滑り込んでくる熱い熱に、堪らず喉から甘える様な声が漏れる。
気が付けば、両の手はカインの背中に回され、その衣服をきゅうと握り締めていた。
「……―――、っ…は…」
つぅ、とお互いの間を銀糸が伝う。
暫し絡み合った後解かれた口付けに、ルックは脱力した風にぽすりとカインの胸に頭を預けた。蕩けきった表情で己の胸に顔を埋めるルックに、カインは柔らかく微笑みながらそっと薄茶の髪を梳く。
「判ったか?」
「……ん……」
照れの混じった、けれどもしっかりと返された頷きに、カインはくつりと可笑しげに喉を鳴らした。
すぐ傍にある旋毛にちょんと口付け、華奢な体を抱き締める腕の力をきゅう、と強める。


そうして心溢れんばかりの睦言で、想い人の鼓膜を何度も優しく擽って。





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バトンのおまけで書いたもの。
なので、ちょっと説明不足なのはご愛嬌(爆)



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