「…―――ったく」
本当に何処行ったんだあいつは。
城の周辺を一通り探し回り、桟橋の上でカインは苛立った様に呟いた。
掻き上げた前髪は湿気で僅かに湿っている。それは余り時間が無い、証拠。
「後は…」
すい、と上に顔を向けた。と、その拍子に頬を打つ、濡れた感触。
「…………」
ぽつ、ぽつ、と地面に落ち始める雫に、カインがちっ、と忌々しげに舌打ちする。ひとまず屋内に入ろうと城の入口に足を向けて。
「カイン!」
「…フリック?」
丁度その時名を呼ばれ、視線を向けて認めた姿にカインは一つ瞬いた。
入口から自分に手を振るフリックに足早に駆け寄り、髪の雫を払いながら問い掛ける。
「何かあったのか?」
「ああ、いや。ルックを探してるって話を聞いたもんだからな」
ぱ、とカインが顔を上げて。
「今も居るかどうかは知らないが、昼前に屋上に上がってくのを見―――」
「もっと早くに言いに来い阿呆っ!!」
フリックの言葉が終わる前に言い捨て、カインは急いた風に踵を返して駆け出した。
「………………………あほ」
呆然と立ち尽くすフリックを放ったままエレベーターに乗り込む。
目的地は、屋上。






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