いのりのうた
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『今から僕は、君を傷付けます』
擦れ違い様の、囁く様な声だった。
それでもそれははっきりとした音だったから、恐らく周囲に居た者―――ラビやブックマン、リンク辺りにはしっかり聞こえていただろう。
……否、もしかしたら聞かせる事前提の言葉だったのかもしれない。
『でも、信じてね』
願う様な。
請う様な。
突き放す様な。
縋る様な。
『信じて、いてね』
哀しい程に真っ直ぐなその声で、けれども彼はそう言うから。
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