過保護なひと
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崩壊しかけた方舟が、アレンによって元に戻された少し後。
神田、ラビ、クロウリー、チャオジーの四人は、何処からか聞こえてくるアレンの声に促されるままに、ピアノが置かれた部屋へと誘われていた。
「皆っ…!」
「リナリー!」
ドアをくぐった直後に視界に入った、涙に濡れた瞳で自分達を出迎える少女の名を、ラビも顔を綻ばせながら呼び返す。
そのまま駆け寄ろうとして。―――しかしその動きは、不意に後ろから首根っこを掴んできた手によって遮られた。
何事か、とラビが怪訝に振り返ると、其処にはやや俯き加減で己の上着の首元を掴む、神田の姿。
「ちょ、…ユウ? 前に進めねーんだけ…」
「―――げ」
「は?」
ぽつりと呟かれた言葉を上手く聞き取れず、ラビは問い返す様に首を傾げる。と、神田はゆっくりと面を上げ、切れる様な眼差しで相手を見据えて。
「脱げ」
直後、猛烈な勢いでラビの上着を剥き始めた。
「え、うわ、ちょっ…!? ユ、ユウちゃんユウちゃんタンマ!!」
「五月蝿ェ!! いいからとっとと脱ぎやがれ!!」
「ぎゃ―――っ!!」
周囲が唖然とする―――クロスはその光景を前にしても、煙草を片手に悠然と構えていたが―――中、神田はラビの上着を脱がし終えると、それを持ってつかつかと部屋の中を進む。因みに彼に抱えられていたクロウリーは、いつの間にやらチャオジーに押し付けられていた。
そうして神田は呆気に取られて立ち尽くすリナリーに歩み寄り、奪った上着で少女の体をばさりと包む。
ぱちり。リナリーの黒曜石の双眸が、きょとんと瞬いた。
「何て格好してやがる」
射抜く様に少女を一度睨み付け、神田はすっと彼女から離れていく。
そんな彼に、ととと、とアレンが歩み寄った。
「神田神田、僕には何も無いんですか?」
「あぁ? テメェは男だろうが」
「…相変わらずですね」
ぷぅ、と拗ねた様に頬を膨らませ、しかしすぐにその表情を引っ込めると、アレンはそっと神田の耳元へ何かを囁き込む。それにぴくりと反応し、神田は髪を揺らしながらアレンに視線を向けた。銀灰色と漆黒の視線が絡み合う。
次の瞬間、酷くさり気無い仕草を装い、愛おしげに白髪に口付けが落とされて。
「ユーウー、アレーン。クロちゃん運ぶの手伝って欲しいさ〜」
「あ、はい。じゃあ其処のソファに寝かせましょう。ほら神田そっち持って。チャオジーはそっちを」
「ちっ」
「はい」
「ていうかユウさー、言ってくれりゃあオレだって素直に脱いだんだからさー」
「神田って言葉による意思疎通能力が本当に著しく足りてませんよね」
「あぁ!? 喧嘩売ってんのかモヤシ!」
「アレンですってば!」
「うわわ落ちる! クロウリーさんが落ちるッス二人共!」
「喧嘩は後にするさー!」
わいわいと喧しい仲間達をぽかんと見つめ、やがてリナリーはのろのろと下に視線を向けた。
体を包み込むのは、一応は着れるものの随分とぼろぼろになってしまったラビの上着。それで自分の体を包んだ時の神田の剣幕を思い返しながら、きゅう、と指先が白くなる程に力を込めて胸元を握り締める。
「よし、クロちゃんも降ろしたし! さー! 好きなだけいがみ合うと良いさ、二人共!」
「あ?」
「は? 何、訳判らない事言ってるんですか、ラビ」
「…………」
ぽたり、零れ落ちる雫。
ああ―――今、自分の顔に浮かんでいるのは、きっと。
















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祝・ティーンズ再集合!!(歓喜)
ああん何だか同人誌みたーいvv(ちょっと待て)

何だかGWを思い出します。ほら、あの5人もギリギリまで全員揃わなかったじゃないですか(しかもトロワは記憶喪失オプション付き)



20080107up


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