そして僕は進み続ける
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「起きたかよ」
少女の声に、アレンはぼんやりと瞳を一つ瞬かせる。
「……フォー」
受身を取り損ねでもしたのか、どうやら暫し気を失っていたらしい。頭を蹴飛ばすという、いまいち優しくない方法で自分を起こした黒の教団アジア支部の番人を見上げ、アレンはふぅ、と息を吐き出した。
イノセンスを取り戻そうと彼女と戦闘を始めてから、一体何日が過ぎただろう。一向に戻る様子の無い左腕に、嘆息はどうにも禁じ得ない。
「どの位気絶してました?」
「五分ってトコだな」
「そうですか」
ふぅ、ともう一つ吐息を零し、アレンは銀灰色の目を伏せる。
肌に感じる、怪訝に見下ろしてくる視線を受け流しつつ、アレンはふとぽつりと呟いた。
「夢を、見ました」
「夢?」
「ええ」
問うてくる声に軽く頷き、アレンはそっと瞼を押し上げる。
「実はね、フォー。僕、好きな人が居るんですよ」
唐突な話題の転換に面食らった風にフォーが瞬いた。
そんなフォーの様子にふ、と笑みを零しつつ、アレンは言葉を続ける。
「フォーと同じ位に口が悪い人なんです。黙ってれば凄く美人なんですけど」
「…お前、それはあたしに喧嘩売ってんのか?」
ぴくりと片眉を上げてのフォーの突っ込みに、違いますよ、とアレンは寝転んだまま肩を竦めて苦笑した。す、と何処か遠くに思いを馳せる様に、再び目を伏せる。
「……ガラが悪くて、短気で、喧嘩っ早くて」
悪い所なんて挙げていたらキリが無い。
けれど。
それと、同時に。
「強くて、心に迷いが無くて、他人に厳しくて、でもそれ以上に自分に厳しくて」
でも本当は、芯の部分は反則な位に優しくて優しくて―――優しくて。
何処までも、真っ直ぐな。
「…ウォーカー。お前、一体そいつの何処に惚れてんだ?」
肝心な所は口に出さなかった所為か、フォーが怪訝にアレンを見下ろして問うた。
それにくすりと微笑って返し、アレンはよっ、と勢いをつけて起き上がる。
「お待たせしました。続きしましょうか、フォー」
「休憩はもう良いのかよ?」
揶揄する様に口の端を上げたフォーに、ふらりと立ち上がりながらアレンは肩を竦めて。
「いつまでものんびりしてたら、何やってんだテメェ! って問答無用で斬り付けられちゃいそうですから、ね」
そうさらりと何でもない事の様に答え、アレンは不敵に挑む様ににやりと微笑った。
















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日記より転載の初書き神アレでした。
……って神田さん名前すら出てないよ!!(笑)


コミックス7〜9巻辺りですね。でもアレンにまだそんなに悲壮感が無いから、アジア支部へ来てまだ間もない頃でしょうか。

ああそれにしてもフォー可愛いなー(萌)



20070204up


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